No.0042:最恵待遇〜オレ一番ね
2017.05.31

 表題の言葉は 相手に自分への対応について他の誰にも劣ることのない素敵さを約束させることです。そんな「最恵待遇」は今日の日経新聞に載っていた言葉で今、何かと話題のAmazon社が仕入業者に対して最低価格で納入することを契約に含めていたそうです。そのこと自体は別に悪いことではありませんが、Amazon社のような市場支配力の極めて大きな企業がそれをやってしまうと市場独占につながり、最終(長期)的には僕たち消費者の利益を脅かす、なんてことで公正取引委員会から茶々が入り、そのような契約を見直すことになったそうです。このような自分へのベストな忠誠を求める姿勢は、男女関係、仕事関係、国際関係、商売など、日常的に様々な場面で遭遇するのではないでしょうか?

 電気屋さんに行くと値切らないと損とばかりに私は、ネットで他店や、他の人の購入価格の情報を集めて、お店の人と交渉します。まさか、他の人が20,000円で買ったものを自分に28,000円で売らないですよね?最恵待遇ですよね?みたいなことで。私は店頭での価格交渉について多くの意見があるとは思いますが、2つの観点から反対です。1つは、 情報を持っている人が得をして、情報を持っていない人が、情報を持っている人の得した分を最終的には負担することになってしまうことです。自由経済の社会だから、当たり前でしょ!そんな競争によって、平均的な価格も徐々に安くなっていくんだ、と言われてしまうかもですが、家電のような広く世に行き渡る商品については変な交渉とか出来れば遠慮したいものです。もう一つの観点は、 交渉する時間自体が、店員、お客、双方にとって有意義な時間ではないことです。例えば、価格交渉の時間を、店員が商品の魅力を懇切丁寧に伝える時間に、お客はその店員からの情報をもとに想像を膨らませ、自分のライフスタイルはこの商品を購入することで、こんなふうに良くなるな!なんて感じられるような素敵な時間に変えることができれば、またこのお店で!ということが増えるように思います。

 価格をずっと固定するなんて過激なことを言うつもりはなくて、店舗間競争による価格変動は当然として、掲示されている価格を、その場の交渉によって下げることには、イマイチな思いを持っています。似たような話としてマクドナルドは以前、地域毎にハンバーガーの価格を変えていましたが、今は統一価格(一部店舗を除く)になっています。地域毎の価格について私は、家賃、人件費などのコストが違うんだから仕方ないのかな?とも思う反面、取れるとこから取りたいのかな?との思いの方が強く、あまり良いやり方ではないと考えていました。

 外国との貿易については最恵国待遇という約束があります。関税などの取引条件を他国より劣ったものにしないでくださいね、を約束することです。wikiで調べたところ、日本は2016年時点でオランダとそのような約束をしているようです。日本はオランダとの貿易に際して、オランダの最恵国であるスイスと同等の好条件で貿易ができます。その一方で 最恵国待遇の約束をしてしまいますと、他国との取引条件が最恵国とのそれに影響しますので、むしろ取引条件が硬直的になる、ヘタな約束できない、なんて話を聞いたことがあります。完璧を目指すことが、常に良い結果をもたらすとは限らない、、、複雑ですね。江戸中期の老中:田沼意次の利権政治(財政的には成功)を否定し潔癖な改革を志したものの失敗に終わった老中:松平定信の失政に対する狂歌に次のようなものがあります。

 白河の清きに魚も住みかねてもとの濁りの田沼恋しき

 魚もいないような(エサがいないため)清らかな川(松平定信のクリーンな政治)よりも、少し濁っていても(エサがいて)魚が泳いでいる田や沼(田沼意次の利権政治)の方がまだいい。

 上記の歌を最恵待遇にあてはめると、 皆に良い顔すると(多くの人と最恵待遇を約束すると)、キツくなる、多少、人によって差をつける、その場、その場の状況で柔軟に出来た方が、全体としては上手くいく、そんなふうになるかと思います。先ほどの電気屋の話とは矛盾しますが、ビジネスの交渉の場では重要な考えだと私は思います。それでは交渉の場において、相手から、より良い条件を引き出すにはどうしたらいいでしょうか?威圧するとか、土下座するとか、コミュニケーションのテクニックも必要だとは思いますが、より肝要なことは 相手にとって自分でなければならない、を感じさせることだと思います。条件が合わないときは、取引をしない、つまり「それでは仕方ないですね」を言える強さ、「あなたが選んでくれなくても、別の人が選んでくれるから、こちらはそんなに困りません」な空気感を交渉の場で持てるか?だと思います。別れを告げられたにも関わらず、あっさりそれを受け容れ悲しみを表に出さない男性を後悔させる女性みたいに。そんな毅然さを持つためにハッタリではない差別化に基づいた自信が備わっていることが重要だと考えます。

 最後に、私は自分にとって大切な人、つまり時間を費やすべき人は誰だろう?を常に考えています。明確なランキングは流石にないですが、最恵待遇は2人の息子です。仕事や、その他のことを優先した場合、その後に彼らへの、それ以上の優先が必要になると自分に言い聞かせています。例えば、納期直前で仕事に追われている時に、子供達に雑な対応をしてしまうことがあります。仕方ないと思いつつ、後のフォローを大切にしています(しているつもりです)。そんな 最恵待遇を2人に続けることで、彼らが今後関わっていくだろう人達の中より、とびっきりな最恵待遇の関係を作り出して欲しいと節に願っています。出来たら、私に対してもそのような思いを少しでも抱いてくれたら素敵なのかなと・・・彼らの選択次第ではありますが。 
最近の一番、Dear Prudence