No.0039:正しさ 
2017.02.26

 自分が正しいと思っていることが他者のそれと必ずしも一致するとは限りません。「常識でしょ!」と言われても、(うーん、僕は…と思う、どうしてかというと…だから)と密かに思いながら、些細なことでぶつかるのも面倒なので「そういう考え方もあるよね」で曖昧に過ごしてしまうことがあります。ただ、しっかりと自分の思いを伝えておかないと後になって問題が大きくなるだろうな?って時は、方向性や価値観は違うだろうし相互に正しさを合わせるのは難しいとしても、 違いを相互に認識しあって、譲るところは譲って、どうしても譲れないところをゲットできるような関係を作っておくことは大切だと考えています。

 このような違いが生じてしまう要因として、先天的、後天的な多くの要因があるとは思いますが、最近、特に強く思うことは 何に対して責任を負っているか?が大きく影響しているということです。

 技術的なことに責任を負っている人、売ることに責任を負っている人、との間にある正しさの乖離の大きさは非常にわかりやすいです。営業が受注してきた仕事に対して技術者は、そんな短期間で、そのコストで作るのは無理!ってこと、よくある話だと思います。営業は売上や利益を優先する一方、技術者は(ある程度の人員と時間を確保した上で)良いものを作ることを優先します。そんな違いから、技術者は営業に対して「技術のことなんて何もわかってないくせに!」一方、営業は「売れないことには技術者の仕事はないのだけど・・・文句あるならば自分で売ってみれば」みたいな不満をお互いに感じることで対立してしまったりします。 

 会社における階層、例えば経営者、管理者、一般社員といった序列間にも正しさの違いが生じます。その一例として、今話題の長時間残業の問題について、経営者はブラック企業として後ろ指を刺されて会社の評判が落ちることで優秀な就活生から敬遠されてしまうことは長期的に会社の存続に関わる問題になりますので、残業を抑えて、しかし業績は落とせませんので、短時間に収益を上げる、つまり生産性を上げるためには、どうしたら良いだろう?と思い悩みます。管理者は残業減らせと言われても、これだけのコミットされた数字を達成しないといけない、僕たちは長い時間を会社に奉仕することで数字を作ってきたんだ、そんなキレイゴトきっと一過性のブームで終わるに違いない!なんて思っているかもしれません。そんな中で一般社員はTVで報道される長時間残業による自殺の問題と自分の残業の長さを照らし合わせて、こんなブラック企業、早く辞めて、自分を正しく評価してくれる会社に転職したいな・・・と思ってしまうのも分かるような気がします(大卒者のおおよそ3人に1人が3年以内に退職しています)。

 その他にも介護の問題を抱えている人、子育て真っ最中の人、LGBT(性的マイノリティ)の人など・・・置かれている状況によって正しさ、価値観は変わってきます。介護の問題に直面したことのない人は、そういった問題を抱えている人が毎日、定時で帰宅することで、自分たちの仕事量が増えることに多少の苛立ちを感じているかもしれません。子育て前の若者は、国のお金がもっと子育てに充てられようとしていることに疑問を感じるかもしれません。母親が面倒みれば問題ないでしょ?ということで。LGBTへの偏見、差別の問題に対して、どうしてマスコミは大騒ぎしてるんだろう?と思ってしまう方も少なくないかもしれません。実はLGBTの方の割合は7.6%で決してマイノリティと言い難く、普通として受け容れる寛容さが求められています。iPhoneを創っているapple社の最高経営責任者がゲイであることをカミングアウトして随分と話題になりました。

 以上のように正しさは、各々が抱えている責任(問題)に応じてホント様々です。生産年齢人口が減り始めて、人手不足が社会問題化しています。そんな状況下で限りある労働者の労働参加を促すために必要とされているのが多様性(ダイバーシティー)への理解です。違いを認め合って、つまり正しさを無理に合わせる必要はなくて、 違いを前提として、異なる相手の持っている素敵に着目して尊敬しあえる、そんな関係性を作っていくことが重要です。そのために変に格好つけることなく、自分が苦手なこと出来ないこと、得意なこと出来ることを、主張しあって、衝突しながら、理解を深め、役割を分担することが当たり前なんだという意識をなるべく多くの人が持つことが重要だと考えています。自分と同じ人とだけで群れて、そうでない人をスケープゴート(いけにえ)にして溜飲を下げる(憂さ晴らしをする)ような、どこかの国の偉い人のようなやり方には強い違和感を感じます。  
異なる二人によるビートルズのin my life