No.0044:音楽が鳴っているうちは、踊り続けなければならない 
 2017.07.29 

 数日前の日経新聞に載っていた、投資ファンドのもどかしさを表した言葉で、オモシロい表現だな、と感動してしまいました。表題の言葉に対して次のような説明がなされていました。

 この言葉はバブルの核心を突いている。 市場は熱を帯び、そろそろ怪しくなっている。でもライバルたちが稼いでいるうちは、ひとり舞台から降りるわけにはいかない。自分だけはうまく抜け駆けできるはず。そんな心理がますます相場を盛り上げる。

 お金を託されているお客からの「他のファンドはこんな成績を上げているのに一体、あなたは何やってんの?」といった批判に対して「暴落が起きるかどうかが問題ではない、それは確実、問題はいつ起きるか?なんです。そんな状況を見越して安全運転しているにすぎないんです!」と説明したところで理解を示してくれる人なんていやしません。だからいつ来るのか分かり得ない「ギリギリのタイミング」までアクセルを踏み続けた結果、皆で大怪我することになります。作業服のジーンズを格好いいズボンにしてしまったジェームス・ディーンの「理由無き反抗」でのチキンレースみたいに。

欲望は過去の教訓を惑わす。

 先日、新しい作品が発表された村上春樹さんの小説「ノルウェイの森」の中で、正確な表現は記憶していませんが「 可能性がそこに存在しているのに、それをやり過ごすワケにはいかないんだ」みたいなことで、多くの女性との関係を繰り返した結果、自分を愛していた女性の命が失われた、そんな退廃な話を表題の言葉から、思い出しました。どこか良い塩梅で止めていたら・・・そんな境界なんて実際ないのかもですが、人が間違えるのは仕方の無いことで、早く間違いに気づいて、、、気づいたとしても、それをすぐに止めることの難しさを感じてしまいました。

 第二次世界大戦は、不景気への対応としての保護主義、つまり自国だけ良ければいい、といった貿易政策を当時の大国がとった結果、それに耐えかね「もうマジで我慢の限界、無理!」ってことで資源やお金に乏しい国が他国への侵略によって、そんな状況を回避しようとしたことが事の発端だった、という見方があります。そんな過去の教訓より、世界の一番の大国であるアメリカ、一時の勢いは衰えつつあるものの、まだ一定の影響力を残すイギリスが自国優先の方向に向かい、それに他国も追随するようなことになったら、3回目の大戦も・・・恐すぎる、というような不安が大きくなっています。(フランスでの大統領選挙の自由貿易を是とするマクロン候補の勝利によって幾分大丈夫かも!な雰囲気も出てはきましたが)

 小さいころクラスでリーダーが気に入らない人を皆で無視するイジメが流行ったことがありました。同調しないと自分も同じ目にあう、だから自分も無視する・・・。そんな自分への不甲斐なさを今でも感じますし、 可能な限りおかしなことに対して同調することなく、声を上げないと自分が自分を許せなくなる、そんなふうに思う事のきっかけになった出来事でした。その後、社会にでて、同じような境遇に会い、イケニエみたいな人を作って、その他大勢の人のスッキリ感を保つことへの同調に、嫌気(吐き気)を感じることが幾度かありました。

 その時は、損かもだけど、長い目で見たときに自分をキープするために傷みを選ばないといけない時がある。

 私は音程とリズムをとることが非常に苦手で、カラオケで歌ったりクラブで踊ったりすることが苦手です。 音楽が鳴っているのに、踊れないのです。お酒を飲みながら楽しそうに踊っている人を、ひたすら片隅で見ているタイプです。バブルの頃、私の両親は好景気と縁遠い仕事をしていましたので、テレビで映し出される派手な様子に、遥か遠い都会でのことであって、我が家とは関係のない出来事だ、との思いがありました。それから数年の後、バブルがはじけて踊っていた(踊らされていた)人たちが、どん底に落とされた時、我が家の生活は、何も変わることなく平穏が続いていました。間違ったことに距離を保っておいてラッキー、正しい選択だった!なんて思っていました(特に選んだワケでもありませんが)。

 その一方、 饗宴に参加することは時に危険を伴うことではありますが、自分にとって大切なそれでは、素敵なダンスを披露できないと!といった思いもあります。そのためにしっかりステップを踏めるよう鍛錬を続けていたいものです。そんな努力の甲斐むなしく靴を踏んでしまったり、リズムをはずすこともあるかもしれません。でも、そんなの一時の恥、それを後々長く覚えてる人なんて、滅多にいません、そう滅多に。(記憶力の良い方の言うことは、適当に無視しとかないと、そんなふうに考えています。)このように上手く踊れる日をワクワク、ジリジリしながら待っています。 音楽が鳴り止むことはありませんので。  
 
ローリングストーンズによる踊りの映像