No.0020:anyone can play guitar 〜 当たり前の裏返しとしての厳しさ
2015.10.08

 私は最近、物流関連の仕事をしていまして、関係する情報を集めながら、いろいろと考えているような今日この頃です。メール、インターネットによる通信が当たり前となり、情報や思いを「運ぶ」ことは時間・場所を超え、たやすく、安価に、瞬時に、行うことが可能となりました。照れとか、緊張とか、しがらみとか、そういうのは脇に置いといたとしたら、ですが。

 その一方で形のある、重さもある、実際のモノはそうはいきません、いや・・・一昔に前に比べたら随分と楽になりました。素敵な商品を千葉県で作った、沖縄県の人が欲しがっている、さて、どうやって届けよう?なんて悩みは、疑心暗鬼に陥っていた初恋のように、今となってはナンセンスなことです。 運送屋さんに依頼すれば、スピーディーに、ごく少額で、確実に、よろしく運んでくれますから。とっても便利な世の中になりました。一昔前なら、こうはいかなくて、クロネコヤマト宅急便の生みの親である小倉さんの、官という非効率な「既得」との戦いによって得られた「戦果」による変化のお陰です。

 また企業の中でモノを運ぶ物流部門は、どちらかというと裏方に位置していて、営業部門のように利益を直接に生む部門ではないからということで、発言権が小さいなんてこともあるようです。営業はお客さんに欠品することなく確実に商品を売りたいものだから多めに在庫を持ちたがります。ただ、在庫をもつことは、下手すると売れ残ってしまい仕入、製造に要したお金が無駄になってしまうリスクがあります。

 さらに、お金が在庫という形で留まってしまう、例えば在庫で100万のお金が費やされてしまうことで、生産性をとてつもなく向上させる新しい50万円の機械を購入する機会を無にしてしまう恐れがあります。先日、三井財閥(越後屋)創始者の三井高利の話がテレビで放映されていたときも、在庫は利益を生まない、売れない在庫はさっさと見切りをつけ安値でもいいから現金化することが大切だ、みたいなことが言われてました。現金があれば、次の展開が見込めますが、売れる見込がない商品(現金)が在庫として留まってしまうことは先の発展を阻害します。そんな在庫の無駄の責任は物流部門に、なんて理不尽もあったりするようです。物流部門は倉庫や運送の実務を担っているに過ぎないにも関わらず、です。

 また似たような話として、モノを生産するときは大量に仕入れて、大量に一気に作ることでコストを下げられる、俗に言うスケールメリットというヤツが一般的に効率的だと言われていました。ただ、作ったのはいいけど売れないことにはお金になりませんので、ここでも大きすぎる在庫、つまり売れ残りといったリスクが生じることになります。特に右肩上がりの成長が止まり、モノが売れなくなったとか、価値観が多様化して人と同じモノは嫌だとか、言われている今、作りすぎによる売れ残りのおっかなさは、随分と大きくなっていると思います。ここまでくると物流部門ではいかんともしがたい、泣けてくる状況です。

 そんな難しい状況下において、売れ残りも、売り逃しも、ないように日々変化する顧客への出荷(販売)量を素早く、営業部門、仕入部門、製造部門さらには経営陣に伝達し、柔軟に生産量、在庫量をコントロールするためのお膳立てをすることが物流部門に求められるようになりつつあるみたいです。

 anyone can play guitar.
 私の好きなロックグループradioheadの曲のタイトルで、 誰にだってギターは弾ける、それは特別なことなんかじゃないんだ、でも僕は、それしかできないんだ、って解釈して、半端ない覚悟を感じたものです。競技人口の多い野球で突出することがいかに困難であるのかと同じように。ただ単に運ぶだけなら誰にもできます、ただそこでの洗練が企業の競争力を大きく左右します。 自分の役割についてピシッと線引いて、他のことは知らない、関係ない、なんてことではダメダメで、外の変化に対して自分に求められていることは何だろう?って常に考えて自分の役割を柔軟に変え続けていかないと自分の価値をキープできないのかなと。

 値段、商品の品揃えが同じであれば、残された勝負のポイントは手に届くまでの早さである。

 セブンイレブンはイトーヨーカ堂、そごう、西武、ロフト、赤ちゃん本舗などグループ会社のネット通販で頼んだ商品をコンビニ店舗で受け取れるようにするようです。流行りのオムニチャネルというやつで、共働きで家を空けることの多いお客にとっては非常に便利なサービスです。またコンビニの商品を自宅に届けさらに次回来るときの注文をタブレットでその場で、とってしまう「さざえさんの三河屋さんのサブちゃん」のような御用聞きスタイルを指向しているようです。これも、お年寄りにとってはまさに神サービスでしょう。 お金を稼ぐ、お客から選んでもらう、ための凄みをセブンイレブンを見ていると感じずにはいられません。私も、そんな厳しさ、貪欲さ、をそばで感じながら自分も同じように変化していかなければと思うばかりです。