No.0015:帰納と演繹〜現実と原則どっちが重要?
2015.05.29

 帰納法とか演繹(えんえき)法という言葉をご存知でしょうか?私は高校の数学の証明の授業で出会って、何となく理解できたような、でも完全には腹落ちしていない、そんな感覚でした。その後も、幾度かお目にかかる機会がありましたが、深掘りすることもなく、ふーんってことで放置していました。

 ところが先日、不意に再会してみて、しっかり理解してみよう!って気分になり、調べて見たところ最近、多分こうだろって仮説を立てる機会が多い中で、とっても参考になったので今回、書いてみることにしました。

 帰納法とはフランシス・ベーコンというイングランドの哲学者によって提唱された、常識とか原則ではなく、現実から結論を導く考え方です。例えば「ラーメン二郎をこの前、食べに行った。美味しかった。」と実際に自らの経験という現実から「美味しい」という結論が導き出されています。

 一方、演繹法とはデカルトというフランスの哲学者によって提唱された、常識とか原則から結論を導く考え方です。例えば「ラーメン二郎はネットで美味しくないって口コミが載っていたし、この前、食べた友人も油ばっかでムリって言っていた。だからラーメン二郎はマズい。」とネットや友人からの情報を常識と捉えて「マズい」と結論づけています(口コミを常識って違うだろ?って言われてしまうかもで幾分、強引な感はありますが、そんなことも少なからずかなと私は思っています)。

 私が思案するときは、どちらかというと帰納的に考えることが多いです。現実をいくつか集めてきて、多分こんなだろうなって。自分で見たり、経験したことは特に重要視します。人から聞いたことは、場合によっては随分と都合良く書き換えられていたりもしますから。

 一方でドイツの名宰相ビスマルクは次のように残しています。

 愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。

 自分のちっぽけな経験だけからの判断って狭くない?ってことだと思います。自らの経験の他に、他者からのアドバイス、歴史や本から得た知見等々を、ずらっと並べてみて、今のこの状況には一体、何がベストなんだろう?って、自分のこころの素直な反応を聞き取ることが重要だと思っています。

 私は今、学校で経営について学んでいます。その学校で実際の企業様へ経営について改善策を提案する機会がありました。そこで指導教員の方より、提案の視野が狭いとの指摘をいただきました。ごく限られた視点での、提案の偏り、重複を防ぎ、広い俯瞰を促すためにフレームワーク(※)の利用を勧められました。

(※)フレームワークとは考えを体系的にまとめた数学の公式みたいなものです。例えば経営の戦略を考える上で3Cというフレームワークがあります。顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの広い観点で作戦を考えましょう!ということです。

 自分の経験を重視するのは素敵なことではありますが、私はまだまだ経験が浅い。だから過去とか常識の叡智を拝借することの有効性を実感してしまいました。謙虚とか、素直さとか、過去へのリスペクトを忘れないようにしたいものです。
英国の伝統と、それへの反発を感じさせるThe Who