No.0059:IT 〜 より人間らしくあるために
2018.10.30

 最近の日経新聞朝刊に次のような文章が載っていました。 
 
 米アップルは製品のすべてに「自由になるために知的に武装する道具」というある種のストーリー性、文学性を織り込み、「米カリフォルニア州というカウンターカルチャー(既存の体制の枠外から生まれた文化)の聖地の申し子」との企業イメージを定着させることに成功している。
 
 意識せずにアップル社の製品を使っていましたが、よく考えて見ると、確かに上記のようなイメージに基づいた格好よさがアップル社の製品を選ぶ一つのきっかけになっているように思います。私の自宅は都心から少し離れているため(15年ほど前、自宅を購入する際、今後はネットの時代、どこに住むかは、さほど重要ではない。だから安くて静かな郊外で!と思っていましたが、その予想は必ずしも的中することなく、都心へのアクセスは相変わらずビジネスに欠かす事が出来ない要素です)、移動時間をオフィスにいる時間とそれ程変わることなく有効に活用することは私にとって、とても重要な課題です。iPhoneやmac、apple watchといったアップル製品によって、電車や、カフェ、時には公園で、その時の気分や必要性に応じた、ほとんどを行う環境が整えられていることに随分と助けられています。お客様のシステムが正常に稼働している確認を、移動途中の電車よりiPhoneで遠く離れたお客様のコンピュータへの遠隔操作で行う事がありましたし、塾に行っている子供に携帯させているiPadの位置情報に基づいた帰宅時間の予測によって夕食準備を行い、帰宅とともにホカホカな食卓の始まりは日常茶飯事です。
 
 このように、IT技術の発達によって、知らず知らずのうちに私たちの生活は随分と楽になり、そうやって作り出される新たな時間によって人間らしい時間が長くなる事を嬉しく思います。googleの代表もかつて、彼らが提供するサービスによって煩雑な雑事や記憶から人間を解放し、人間をより人間らしくしたい、みたいな事を述べていました。今日は、このような観点で、私が利用した結果、すごい!と思った3つのIT関連の製品についてご紹介させていただきます。
 
 1つ目はQrioLockというスマホやスマートウォッチで鍵の開閉ができるスマートロックと呼ばれるジャンルの製品です。自宅ドアの鍵のツマミにQrioLockを被せて接着し、QrioLockがスマホと通信する事で開閉する仕組みです。機能として次のような機能があります。

  1. ドアに近ずくと自動的に鍵が開く。
  2. 閉めると自動的にドアが閉まる(オートロック)。
  3. 開閉時にスマホに通知が届く。
  4. バーチャルな鍵を期間限定でメールなどで配布できる。
  5. 遠く離れた場所より鍵の開閉状態の確認および、開閉ができる。
※3と5は別売りの機器を購入してインターネットに接続する必要があります。
  
  特に便利なのは3の機能です。我が家は共働きであるため、息子の帰宅が心配です。鍵の開閉通知によって、それを知り、安心を得る事が出来ます。また5の機能によって家族の誰かが鍵を忘れた場合、鍵を持っている人に連絡して、即座に開けてもらう事が可能です(私は幾度か鍵を忘れて妻の帰宅まで庭で待った事があります。ターゲットを待つ暗闇に忍ぶ怪しげなストーカーみたいに)。また4の機能によって今後、利用の加速が予測されている民泊の鍵の受け渡しに人の介在を不要にすることによる効率化が実現出来ます。
 
 2つ目はシャープのホットクックという自動調理鍋です。カレーやシチュー、肉じゃがなどの料理を材料をセットするだけで、あとはお任せで出来上がりです。朝に材料をセットし、出来上がりを夜に予約し、帰宅後すぐにホカホカの夕食にありつくことが出来ます。またレシピはスマホやWEBなどで随時、追加されいます。ですので気に入ったメニューがあればホットクックにインターネット経由で新たなレシピをダウンロードし利用する事が可能です。味もお世辞抜きに手作りに負けない美味しさです。時間のない共働き世帯にはうってつけの製品で、時短家電の筆頭格です。一つ文句を言わせていただくとすると、最近のAIブームに乗りたいのか、渇いたコンピュータ音でよく喋るんです。「美味しくできますよーに」とか「頑張ってますよー」とか、多分設定で消す事ができると思いますが、まっいっか、でそのまま喋らせています。どんな不満もまずは聴いて受け止めてくれる、懐の深い心理カウンセラーみたいに。
 3つ目はアマゾンのスマートスピーカーechoです。去年あたりから随分と騒がれていましたが、今後はじっくり、生活に定着していく時期にあるように思います。我が家ではリビングと寝室にそれぞれ設置しています。様々な機能がありますので全てを書き記すことは困難ですが、我が家の主な利用機能は次の通りです。
  1. ニュースを聞く。色々なジャンルのニュースがありますので事前に設定しておくことで自分に適したニュースを聞けます。
  2. 天気を聞く。現在地に基づく天気情報を教えてくれます。ただ結構、ハズレが多いです・・・。
  3. 質問する。ググるの音声バージョンです。
  4. 音楽を聞く。我が家はamazon primeサービスに加入していますので、amazon primeで聞ける楽曲を、楽曲名、アーティスト名を指定することで再生してくれます。またiPhoneでechoに無線(Bluetooth)で接続してiPhoneの曲をechoで鳴らすといったことも出来ます。
  5. kindle本の読み上げ。購入したkindle本を他の端末で読み掛けた位置より再生してくれます。
  6. 買い物をする。過去の購入履歴をもとに商品を勧めてくれて、そのまま購入することが出来ます。
  7. 家電の操作。Hueという照明のオンオフ、照度の変更、色の変更などが出来ます。またテレビのオンオフ、チャンネルやボリュームの変更も出来ます。それからエアコンや扇風機のオンオフもよく使います。(こういった家電操作の中にはecho以外の通信機器とechoを連携させて操作している場合もあります)ルンバ(掃除機)の操作も出来るようですが、使った事はありません。どうしてかというと、ルンバの開始前に、散らかった床を綺麗にする前作業が大変で、気軽に開始するわけにはいかないからです。
  8. タイマーの設定。煮物などをしている時に「アレクサ(amazon社の提供するAIの呼称)、10分後に教えて」と話しかけると、指定時間後にアラームで知らせてくれます。また「アレクサ、明日6時に起こして」で目覚ましにもなります。
  9. 部屋(echo)間で会話が出来ます。「アレクサ、寝室に呼びかけて」で寝室と話が出来ます。「受信」という概念がなく、呼ぶと、そのまますぐに繋がる手軽さがとても便利です。

 以上、ズラズラと書き出してしまいましたが、我が家はこのように、echo(アレクサ)が生活に溶け込んでおり、欠かせない存在になっています。利用を続けて分かったのですが、音声操作の最大の武器は即時性です。パソコン、スマホと違い、必要な時に即座に話しかけ、それに応え(答え)が返ってくる手軽さは何ものにも代えられません。またamazon社側に立って考えてみると、スマートスピーカーはamazon社にとって強力な戦略商品であると考えています。AIを、より人間らしく研ぎ澄ますためには、学習、つまりデーター量が重要になります。スマートスピーカーで他者に先行したamazon社は、echoで得られるデータを活用しAI(アレクサ)を洗練させ今後、人手不足などへの対応として期待される省力(人)化サービスにAI(アレクサ)で席巻してしまう可能性も否定出来ません。さらにamazonの提供する数々のサービス(ネット通販、動画・音楽配信、電子書籍、実店舗販売、クラウドサービス、物流・・・)とechoを有機的に組み合わせることで、大きな相乗効果も期待できます。つまりechoをamazon社の数多くあるサービスの入り口にすることでサービスを手軽に利用出来るようにし利用者拡大を図り、また同時に大量のデータ収集を行い、さらにAI(アレクサ)が賢くなる(成長する)、といった良いサイクルが期待できます。これ以上アマゾンエフェクト(アマゾンがあらゆる企業・業界を飲みこむ脅威のこと)が加速するのはちょっと怖い感じもしますが。最近、勝ちすぎのamzon社への逆風も以上のような強さへの恐れ、嫉妬があるのかもしれません。
 
 以上に3つの製品を紹介させていただきました。3つの製品について共通することは、一つ一つの効用は、びっくりするほど大きなものではありませんが、チリも積もれば山になる、つまり日常の繰り返しの中の小さな作業が効率化されることは、長期で捉えると、とても大きな効用が得られるということです。工場の生産ラインで長時間に渡り高速に動き回る機械のちょっとした無駄取りが、大きな利益をもたらすように。利用する側の私たちは、冒頭でも示したように、そんな道具の素敵によって作り出される時間を、子供たちとのコミュニケーションや、やってみたかった、知りたかった、でも余裕がなくて諦めていた自分への知的投資などに振り向け、生活の、人生の、質を向上させて行けたら素敵です。最も価値ある資源は、もはや石油ではなく情報だと言われ始めています。ですので情報を上手く活用することで、人・モノ・金といった経営資源に乏しい小さな組織が、大きな組織と対等に渡りあう機会が今後、増していくように思います。そんな中、私は様々な情報を収集し、噛み砕き理解し、活用する(捨てる)、を活発に繰り返していきたいと考えています。可能であれば息子とテクノロジーの会話を今後20年に渡って対等に続けらているとしたら、こんな幸せは他にありません。

最近、amazon musicで聞いているmiles davis