No.0073:不易流行〜変えないこと、変えること
2019.12.31

 表題は松尾芭蕉の俳句の理念で、 過去も現在も未来も変わらない不変的な事を「不易」、その一方でそのときどきの状況に応じて素敵さをキープするために変えていかなければいけない事を「流行」 と私は理解しています。
 
 私は変えてはいけないことと、変えることの判断が難しく感じてしまうこと、しばしばです。その一例として、日本の昔から続く風習、具体的には、お盆の先祖を敬う気持ち、お祭りを祝う気持ち、さらにはお米を美味しくいただくこと、等は、 自らのルーツを考える良い機会となりますので「不易」として大切に受け継いでいくべきことと私は考えています。しかし、若い頃は、そのうち廃れていくのも仕方ない、だって住む場所も、考え方も、関わる範囲も、変わっていくものだから、といった薄っぺらい考えを持っていました。
 
 逆に状況に応じて素敵をキープするために私が変えている「流行」を挙げます。私はプロジェクトを管理する仕事に従事していまして、他者と協力して物事を進めるにあたり、相手を信用し任せる?もしくはこちらの意向を前面に押し出し管理を強くする?一体どちらが適切なんだろう?との迷いが少なくありません。前者は個々人の豊かな発想を引き出す反面、怠慢や意見集約がままならないことによる停滞の懸念があります。後者は決められた事を正確にこなす正確性、品質の高さが期待できる一方、メンバの創造性は鳴りを潜め、指示待ちの受け身に終始する非効率が待っていたりします。
 
 このような判断にあたっては、チームを構成するメンバの成熟度、お客様との関係、スケジュールや品質に対する厳しさ等々、といったプロジェクトの状況によって変わるものでもありますが、今の私はどちらかというと管理の強さが重要との思いを持っています。どうしてかと言いますと、私はいつも同じメンバと仕事をしているわけではなく、必要に応じて集まった毎回異なるメンバと仕事をしていまして、最初からメンバの皆さんを詳しく知っている訳ではなく、最初から相手に任せるのはどうしてもリスクを感じてしまうためです。時間を重ねながら徐々に任せていくのが適切だと考えています。しかし管理を強くすることは私にとっても負担が大きい事ですので迷いを感じることが少なくありません。どちらか?といった二項対立の問題ではなく丁度良いバランスが求められることですので、今後の経験によって変えていく事になるだろうと考えています。
 
 次に「不易」が繰り返されることで「流行」になる例について、服やシステムの処理方式、音楽の流行について取り挙げます。服の流行は皆さんもご存知のように過去の流行が再び盛り上がることが間々あります。私が若かった頃、その20年以上前の英国で流行したMOD’Sというタイトなスーツにイタリア製のスクーターといったスタイルがリバイバルしていまして、私も夢中になっていました。システムの処理形式の変遷として、今から30年ほど前は、中央の高速コンピュータに複数の処理用端末がぶら下がるような中央集権型が主でしたが、Windows95が発売された辺りから、パソコンの処理性能が上がったことで、それぞれのパソコンで処理を行うような分散型が拡がりました。ところがインターネットの発達によりWEBで利用される中央のコンピュータで処理する中央集権型が復権しました。ですがここ最近、IoTで集めたデータを遅延なく高速にこっち側(エッジ)で処理する、または改竄を防止し中央の管理に従属しないブロックチェーンの台頭により、分散処理が復興しています。音楽については過去のスーパースター、例えばビートルズへのリスペクト、オマージュみたいなことで曲のタイトル、カバー、曲調などが、今に蘇ることが少なくありません。このように時代を超えた「不易」の「流行」としての繰り返しが散見されます。
 
 以上のような 「不易」を疑ったり、「流行」をいつまでも盲信しないように心がけたいです。「流行」を「不易」と取り違え、いくつものオプションが存在しているにも関わらず、何の検討することなしに稚拙な決断がなされることに残念に感じてしまうことがあります。可能な限り、その決断に対し正面から意見するべきで、ここで愚痴みたいに書くのって格好悪いとは思います、が「立場」の違い、、、での仕方なさと、ひょっとしたら自分が上手く説明できていないのかな?といった不満と不安の入り混じった迷いを感じてしまうことがありあります。他者の判断が自分と異なることがあるのは当然ですが、 大切なことに対して、それが生じた場合は丁寧なコミュニケーションの継続を諦めないようにしていきたいものです。
 
 個別の状況に左右されることない、余計が取り除かれたシンプルな「不易」をたくさん認識しておいて、そのようなことをベースにちょっとした要素を付け加えたり、組み合わせることで新たな状況の変化に対応できる「流行」を考えていけたら素敵だと思っています。そうすることで随分と前には圧倒的に正しかったことが今の実情にそぐわなくなりつつある不便に対して決別し変えていける自分でありたいと思っています。
 
I made one decision in my life based on money,and I swore I would never do it again.
人生を金で決めたことがある。だがもうしないと誓った。
MLBアスレティックスの元GMのビリービーン
変わったBeck