No.0074:手段と目的 〜 あべこべ
2020.01.31

 改善したい、達成したい、乗り越えたい、何かの目的、課題があって、そのために必要なこと、ものが手段です。例えば「ほこりで汚れた床を綺麗にしたい」目的に対して、「掃除機で掃除する」手段によって目的がかなえられます。私は家電が大好きなため、ダイソンの新しい製品が出ますと、重さや、バッテリ継続時間、吸引力の向上、どこで買ったら安いか?といった情報を長々とネットで確認(満喫)することで大切な時間を失ってしまうようなことが少なくありません。このようにダイソンの素敵すぎる掃除機の購入にワクワクしまくることで手段の目的化に陥ります。しかし、いざ購入してしまいますと、このような熱は急激に冷め、掃除機は掃除の道具、つまり手段となり通常モードに落ち着きます。このような「あべこべ」は多くのケースで見受けられます。
 
 例えばメールやメッセージサービス、はたまた企業の業務システムなどのITツールは仕事を効率化する素敵であふれています。しかし、ここで気をつけないといけないのが、何のために利用するのか?ということです。流行っているから導入しないと!で軽いノリで利用を決めると、導入や運用のために多くの時間とお金をかけたものの、目的(そもそもそんなもん、ないのかもしれませんが・・・)に対する効果はイマイチってことが少なくありません。実際に私が経験したことですが、こぢんまりとしたシステム開発プロジェクトにおける課題の「見える化」の目的のために、それに見合った、早く、安く(追加料金なし)導入できて、運用が楽な、エクセルによる管理を考えましたが、そんなじゃ管理出来ない!との周囲の反対で、目的に対してオーバースペックな、スケジュール管理、ナレッジマネジメント(過去の課題への参照機能)、タスク管理などの機能がてんこ盛りな、運用もそれなりの負担を要するツールを選んでしまいました。結果は残念なものでした。子供の保育園の5分の送迎のために新調された真っ赤なポルシェ911みたいに。私が目的を意識しない人に対して、そこは頑張るところではないことを、しつこいくらいに説明するべきでした。流行に惑わされてはいけない、本質は何だろう?と。ただ、こういうこと本当に笑えません。雑誌やネットで取り上げられている流行のITツールを何となく導入して、導入や運用にかかる費用、負荷が効果に比べて圧倒的に大きい手段の目的化による不良債権みたいなITツールは少なくありません。皆さんの周りにもあるのではないでしょうか?面倒でかつ何の為に利用しているのか謎の、決まりだから?なITシステム。

 ストーンズの「欲しいものはいつも手に入らない」な曲
 
 企業における似たような例で、 上位層の手段が下位層の目的になってしまう ことがあります。例えば経営者は人手不足の解消をどうにかしたい悩み(目的)を抱えています。そこで解決手段の1つとして、残業の削減を掲げ、退職者の抑制と、転職者のマイナスイメージを払拭しようと考えました。それを受けて組織の管理職は残業削減を目的として、とにかく早く帰れ、じゃないとオレの評価がさがってしまう、みたいなことで業務時間の減少に伴うアウトプットの減少を食い止めるための生産性向上に手をつけることなく、残業削減だけを妙に頑張ってしまいました。その結果、業績が低迷し、全社員一律給与カットの憂き目を見ることになり、寧ろ退職者が増え、さらなる人手不足を招いてしまいました、といった手段の目的化による悲惨が今後、増えるかもしれません。
間違った問いに対する正しい答えほど危険とはいえないまでも役に立たないものはない。 ドラッガー
 次はお金の話です。最近、銀行の、とりわけ高齢者に対する投資や保険商品の無責任な販売に批判が集まっています。企業に融資しても金利が付かないから儲けがでない、だから銀行という信頼の高さを利用して手っ取り早く、お客が欲しい商品ではなく、自分たちが売りやすい商品を、情報をもっていない、くみしやすい高齢者に売りつける、、、本当に酷いものです。本来の社会的な 目的は高齢者の残された人生に必要な生活費の確保のはずですが、高齢者の資産減少のリスクを顧みることのない金融機関の小銭稼ぎの手段に成り下がっています。

A banker is a fellow who lends you his umbrella when the sun is shining, but wants it back the minute it begins to rain.
銀行家というのは、太陽が照っているときに自分の傘を差し出して、雨が降り始めるやいなや、それを返せと言うような奴だ。 「トムソーヤの冒険」の著者:マーク・トウェーン
 
 最後に、私のお金に対する考え方についてです。幸せになるためにはお金は必要です。つまり、幸せになるといった目的を達成するための手段としてお金は、欠かすことが出来ません。私はこのことが経験的に正しいと考えています。お金がなくても夢があれば、は通用しません。独身時代までの妄想だと確信しています。しかしお金は、目的ではありえません。私のお金へのスタンスは支配されることなく、つまりお金一辺倒で鼻息荒くすることなく、上手く利用することです。どういうことかと言いますと、今後の自分や家族が向上するための教育や体験、機会への投資には、惜しむことなく、借金してでも支出しなければいけない、逆にそういった恩恵が望めない浪費は可能な限り抑制したい、このようなことで、投資が回収され、それを元手に、前より少し多めに投資に回し、さらなる回収を得て、、、みたいなサイクルでもって幸せの雪だるまを実現し、さほどお金に気をかけることなく、自分の純粋な目的に没頭できる状態を早めに作り出せたら素敵だと思っています。
 
Love the problem, not your solution.
問題解決を愛し、解決手段を愛すな。
物流で革新を起こしている米コンボイ社の幹部ジアド・イスマイル氏