No.0079:良い塩梅
2020.06.28

 
  銭か?命か? とても難しい問題です。急ぎすぎた?経済活動の再開によって、ここ最近世界中でコロナの感染が再び拡大しています。 蓄えのある人にとって銭は喫緊の課題ではありませんが、日銭で生活している方にとって働けないことは命に関わる重大な問題です。 飢え死にするくらいならコロナで死んだ方がマシ、みたいな表現がニュースで報じられていました。暫くは、全面停止でもない、全開でもない感染状況を注視しながらの「良い塩梅」な活動へのコントロールが求めらる状況が続きそうです。今回は互いに影響し合う別々のコトがどっちか一辺倒ではない丁度良くバランスするポイントである「良い塩梅」について書いていきます。
 
 今回のコロナ禍によってリモートワークが一般化し働き方が一変しました。最近、出勤を許す企業が増えていますが、私はいつも同じ時間、場所に集まって働くコロナ前にもう完全には戻らないと考えています。コミュニケーションの問題で効率が落ちるとの声が一部であった一方で、このままリモートを活用したいと考えている方が殆どだというアンケート結果が新聞で報じられていました。 通勤の無い効率性はQOL(quality of life)を著しく向上させます。ただしリモートかリアルか?の2者択一ではなく、週3リモート、週2リアルくらいが現状の私にとって「良い塩梅」 なのかなと感じています。リモートとリアルの比率はそれぞれの事情、例えば、どうしても商品や設備の側にいなくてはいけない、人との五感を通じた密なコミュニケーションによる調整が必要、日々新たな人間関係の構築が求められる、等によって三者三様の「良い塩梅」があると思います。
 
 先日、士魂商才という言葉が新聞で紹介されていました。次の1万円札になる渋沢栄一が実践していた言葉で、 お金儲けが上手い、更に武士としての高潔さも兼ね備えていることです。ここ最近、金儲け、例えば、株主を妙に大切にする経営に???がつきまくり、環境保全、法令遵守、さらには社会貢献が経営に求められるようになってきました。そんな中、今回のコロナ禍でそのような流れが決定的になりそうです。例えばパンデミックが猛威をふるっている中、自社の利益ばかりを優先して、感染機会に溢れている電車通勤を強いて、狭いオフィスに閉じ込め、遅い時間まで働かせた結果、集団感染を発生させ、社員の家族や通勤途中の乗客に感染を広めた場合、企業の存続が危ぶまれます。流行りの言葉で表現するとサステナビリティが欠如しています。ついこの前までROE(自己資本利益率)とか、それを高くする株主還元だとかが、強くもてはやされていたのが遥か遠い昔のようです。不倫によって勢いが削がれるばかりでなく叩きまくられる芸(能)人みたいに。このように経営にも銭と倫理観の「良い塩梅」が求められるようになってきました。
 
 私の生業としているシステム構築はお客様のニーズに応じて機能が形作られます。ただし、あれもこれもと言っていると、とんでもないお金がかかってしまいますので、どれくらいの予算で、どこまでシステムで出来るようにするか?お客様と意思疎通を繰り返し取りまとめることは私の重要な役割です。例えばお客さんを満足させる、従業員の退職を食い止める、会社の評判を上げる(悪評を鎮める)など、会社が直面している課題に応じて大切にすること、つまりシステム化の目的が決まります。で、たっぷり挙がった要求の中より、より目的に合致した要求を優先的に対応するようにします。さらに目的に対する費用対効果も併せて考慮します。例えば「コスト削減による利益の向上」を目的に掲げ、システム構築に1億かけて、その導入によって得られるコスト削減効果がトータル7千万だった場合、差額のマイナス3千万は何だったんだ?ってことになってしまいます。コロナ禍の中、効果を発揮できない行政のシステムみたいに。このような要求は何としても止めなければいけません。 限られたお金で、よりお客様のこうありたいに可能な限り応えられる「良い塩梅」が自分の価値を構成します。
 
 かつて私はどちらか一方に極端になり過ぎていたことがあり、そのことは自分を酷く辛くさせていました。例えば人との距離感が近すぎました(人に可能な限りやさしくなければいけない、といった思い込みによって)。お客さんにも、友人にも、パートナーにも。 そんなに、やってあげなくていいし、やってもらわなくてもいい。そこまで、相手を分からなくていいし、自分を分かってもらわなくてもいい。いつも、そばにいなくていいし、いてもらわなくてもいい。 そう思うようになって随分と楽になりました。ただ「良い塩梅」って難しい!と感じることがあります。最初からそこにピタッとハマることはそんなになくて、これくらいかな?イヤ、もう少しコッチだな、、、みたいな修正を繰り返して、ようやく「良い塩梅」に辿り着けたりします。経験や知識を増すことで、修正を少なくできるようになります。しかし時には何もないまっさらな状態で臨んだ方が変な思い込み、偏見なく、感じたことに素直にすることで旨くバランスできるようなこともあります。だから難しい、でもそれは仕方ないことです。
 
 先日、日本のスーパーコンピュータ「富岳」の処理性能が米中のそれを抑えて久しぶりに世界一になりました。そのスーパーコンピュータの発展を桁違いに早めるだろうと言われている量子コンピュータという技術があります。今までのコンピュータは0か1を区別して計算をしていましたが量子コンピュータは0でも1でもある状態を作り出すことで超高速に処理が出来るようです。やはり どちらかに限定してしまうことは効率的ではないのかもしれません。コロナよりも犠牲者の多い自動車を、その圧倒的な利便性により利用を止めようなんて全く思いもしないように。
rolling stonesの「良い塩梅」?